コミュニティマーケティングとは?目的や手法、効果について解説①

近年、コミュニティを活用したマーケティング「コミュニティマーケティング」が新たなマーケティング手法として確立されつつあり、注目する企業も増えてきています。ユーザーからユーザーへと作用させるコミュニティマーケティングとは何か、その基本的な考え方やメリット、デメリットについて解説します。

今回のテーマは2つの記事に分かれており、次回の記事ではコミュニティマーケティングの主なツールや各SNSを運用する上での具体的な内容について紹介します。

コミュニティマーケティングとは?

コミュニティマーケティングの定義

コミュニティマーケティングとは、コミュニティ(共通の興味やニーズ、価値観をもつ人たちの集団・つながりの力)をマーケティングに活用することです。

一般的には自社のブランドや商品のユーザーを対象とすることが主ですが、メディアにつながる読者や、その他の世の中にある既存コミュニティ、潜在的コミュニティを活かす発想もありえます。

具体的にはSNSや企業の専用コミュニティサイトなど、ユーザーとつながるオンラインでの交流の「場」を設定し、ユーザーをコミュニティとして活性化させていくことで、情報の伝播や到達、ロイヤルティ向上、LTV(顧客生涯価値)向上、ユーザーとの共創やユーザーからのサポート獲得といった目的を達成していきます。

コミュニティマーケティングの目的

コミュニティマーケティングに取り組む目的は、従来型の一般的なマーケティングでは実現しにくい効果を追求することです。

従来の「企業側から広告などを使ってユーザーにアプローチする」マーケティングは、さまざまな社会・市場環境変化のなかで、効果を発揮するのが難しい状況になっています。

一方のコミュニティマーケティングでは「ユーザーからユーザーにアプローチする/作用する」マーケティングによって効果を発揮します。

例えば情報の伝達~興味喚起を広告ではなく、口コミや紹介、UGC(ユーザー生成コンテンツ)などユーザー同士のコミュニケーションによる働きかけで実現していきます。

そうした手法によって、新しい効果や新しいコストパフォーマンスを目指していくのがコミュニティマーケティングを行う目的です。コミュニティマーケティングは、従来のマーケティングと比べると手間も時間もかかります。その上で実行し、効果を出して成功に導いていくためには、継続して取り組み続け、確固たる目的意識を持ってKGI・KPIなどの具体的な目標を設定することが重要となります。

コミュニティマーケティングと従来のマーケティングとの違い

従来のマーケティングでは、潜在顧客にマスメディア・広告などを使って広くアプローチすることでまず認知をつくり、その上で興味関心を醸成し、購買促進~顧客化していきます。

一方、コミュニティマーケティングでは、アプローチする先は既存顧客(ユーザー)です。ユーザーの力を借りることで情報や話題、良い評判を他のユーザーおよび潜在顧客に広げたり、ユーザーのロイヤルティを強化することでLTVを向上させたり、ユーザーにマーケティングに協力してもらったりします。

従来のマーケティングでは、いわゆるペイドメディア(広告)の力に依存するところが大きく、そこに資本を大きく投入できる企業がやはり優位に立ちます。コミュニティマーケティングは、規模の小さな企業であっても、やり方次第で優位なマーケティングを実現することが可能です。現在はペイドメディアにあまりリソースを割かず、コミュニティマーケティングにリソースを割いて取り組む企業やブランドは多くなってきており、成功事例も多数生まれています。

コミュニティマーケティングのメリット

新たなマーケティング手法として確立されつつあるコミュニティマーケティングに取り組む上で、メリットとデメリットを理解することはとても重要です。

まずはコミュニティマーケティングのメリットについて解説していきます。

売上・収益の効果的な実現
いわゆる「パレートの法則」で知られるとおり、売上の8割は2割の顧客に依存していると言われます。実際に、調査をしてみたところ売上の多くが2-3割のユーザーによって生まれていることがわかった企業は多いようです。

コミュニティマーケティングはこうした影響度の大きいユーザーを含む既存ユーザー群に対して働きかけるマーケティングであり、そのエンゲージメントとリピートを向上することによって、結果として、売上目標の達成や成長に向けた効果的なアプローチとなりえます。

LTVの向上
ユーザーにおけるロイヤルティを向上させることによって、企業・ブランドとのつながりを維持し、LTVを向上させることができます。従来のペイドメディア中心のマーケティングがその都度の‘掛け捨て’型施策になりがちなのに対して、コミュニティマーケティングはユーザーとのつながりや関係性を‘貯蓄’(蓄積・累積)することができます。投資をした結果は目先の効果だけでなく、長期的な利益として返ってくることになります。

効率的な新規顧客獲得
近年、広告による一方的な情報伝達は、徐々に効かなくなってきています。理由は、企業からの情報に対して、生活者が取捨選択の目線や見定めの目線を持つようになり、一方でユーザーの実際の声や評判を信用するようになってきているからです。SNS利用者数の拡大と浸透は、その変化を大きく加速させました。コミュニティマーケティングは、ユーザーにアプローチし、ユーザーのアドボカシー(支持や代弁)を集め、拡大・伝播させることによって、潜在顧客に対しても強い影響を与えることができ、結果として、効率的な新規顧客獲得の手段にもなりえます。

予算やリソースが限られていても勝てる可能性がある
ペイドメディアによるマーケティングは、資本やリソースが潤沢な大手企業にとって有利な戦い方ですが、コミュニティマーケティングは、そうとは限りません。仮にマーケティングに投じられる費用やリソースが限られていたとしても、やり方次第で勝ち抜ける手法です。いわゆる‘弱者の戦略’を求められるとき、コミュニティマーケティングはその有効な方法論になりえます。

ユーザーとの共創とその恩恵の享受
コミュニティマーケティングは、ユーザーの力を借りるマーケティングであり、ユーザーに頼るマーケティングとも言えます。活性化したコミュニティには、例えば商品開発や企画立案などに参加してもらったり、新しいアイデアづくりに協力してもらったりすることも可能になります。ユーザーの生の声を取り入れて企業が提供するサービスや商品を改善することで、新たな価値創造やイノベーションにつなげられます。

関連して、企業・ブランドのことが大好きなロイヤルティの高いユーザーには、マーケティング活動そのものに協力してもらい、企業・ブランドの代わりに働いてもらうことも可能になります。事例として、あるブランドでは、店頭でブランドの説明を行うスタッフの役割をファンが担っています。ある企業では、ファンがSNSの運営を手伝っています。いわば、企業やブランドに愛着を持つファンがマーケティングの一員として働いて支援してくれる‥そんな状態を作ることが可能です。金銭的報酬ではなく、ブランドへのロイヤルティ、ブランドへの参加欲求を満たすことを報酬にできるからこそ、そうした状態を実現することができます。

コミュニティマーケティングの留意点(デメリット)

コミュニティマーケティングには、留意点(デメリット)もあります。

効果を発揮するまでに一定のガマンが必要
ユーザーによるコミュニティが形成され、その状態が活性化し、ユーザーからの情報・評判拡散を恒常的に発生させたり、ユーザーに積極的に協力してもらえたりするようになるまでには、長ければ数年など、一定の時間がかかります。その期間を抜けきることができれば、非常に強いマーケティングの仕組みが出来上がった状態になりますが、その状態にたどり着くまでには多くのリソースの投入が必要です。明確な目標設定や戦略意識がなければ、ガマンの時期を耐え続けることはできませんし、一方で中途半端なリソース投入では成果を上げることもできなくなります。

ノウハウが必要
コミュニティの生成や活性化、コミュニティの力を活用したマーケティング運営には、ノウハウや経験・知見が必要です。

具体的にはコミュニティマーケティングに関する基本的な知識だけでなく、SNS運用、顧客とのダイレクトなコミュニケーション、ユーザーロイヤルティアップのための方策やプログラムづくりなどの専門的なノウハウが必要です。それに加えて、PDCAをまわせるスキル、かつ、それらを実現できるメンバー配置や運営体制づくりの知見など、SNSをビジネスの視点で理解・活用する視点が求められます。

これらを社内ですべて運営するのは各方面において困難なケースが多く、外部にアウトソーシングしながら運営できる体制構築が重要です。

コミュニティマーケティングは、なぜ今、必要とされているのか?

コミュニティマーケティングが必要になった背景

コミュニティマーケティングが昨今注目されている背景としては、下記のようなことがあります。

商品の同質化
あらゆるマーケットが成熟しコモディティ化が進むなか、もはやモノ・機能による差別化や優位性担保は困難な状況です。

商品を選んでもらうためには、むしろ共感や好意が必要になってきており、そのためにはコミュニティによるアドボカシーや評判、コミュニティが語れる共感性あるストーリーが必要です。

情報の氾濫
スマホの普及とSNSの浸透によって、すべての生活者は情報の発信者となった結果、情報のビッグバンが起きています。総務省のデータによると、生活者が受け取っている情報量は、2002年と比較して2020年には約6000倍になりました。そうした環境下で、企業が発信する多くの情報は埋没し、生活者に認識すらされなくなってきています。広告に対する生活者の注目や反応が鈍くなりつつあるなか、コミュニティから発信され、伝播した情報や評判は、共感できる/信用できる情報として生活者に届くことが期待できます。

消費意欲減退を含む価値観変化
新しい世代の台頭もあり、世の中・生活者の価値観も変化してきています。かつてと違い、モノを所有することに喜びを感じない世代が現れ、環境意識の高まりやSDGsの流れもあって、世の中全体の消費意欲は減退していると言えます。そうした状況下で消費を生み出すためには、単なる機能の訴求では不十分で、新たな共感性の創出が必要です。

市場縮小(人口減少)
内閣府によると、日本の総人口は2030年から2060年にかけて3/4に縮小すると言われています。オーストラリア1国分に匹敵するマーケットが今後日本から失われていく、とも言われています。消費する人口が潤沢だった時代が終わった今、ひとりの顧客に向き合い、その顧客と関係を築きながら長期的な利益を生み出していくことが、企業の最重要テーマになってきています。


今回はここまで】

次回の記事ではコミュニティマーケティングの主なツールについて言及し、コミュニケーションを立ち上げる前に取り組むべきこと、実施のステップや意識すべきポイント、実際にコミュニティマーケティングを実践する上での注意すべき点など、より具体的な内容について紹介していきます。