コミュニティマーケティングの具体的な手法を解説!成功に導くポイントとは?
コミュニティマーケティングの主な手法・ツール
近年、コミュニティを活用したマーケティング「コミュニティマーケティング」が新たなマーケティング手法として確立されつつあり、注目する企業も増えてきています。ユーザーからユーザーへと作用させるコミュニティマーケティングとは何か、その基本的な考え方やメリット、デメリットについて解説します。
今回のテーマは2つの記事に分かれており、前回の記事ではコミュニティマーケティングの定義や目的、留意点などについて紹介しました。今回は、コミュニティマーケティングの手法や実施ステップ、成功させるためのポイントを紹介します。
コミュニティマーケティングにはさまざまな方法がありますが、主要な手法としては以下の4つが挙げられます。
- ①SNSアカウント運用
- ②コミュニティサイト運営
- ③ライブ配信(YouTube)
- ④オフラインイベントの開催
①SNSアカウント運用
SNSはスピーディに始められ、かつ、効果的なコミュニティマーケティング手法の一つです。近年、スマートフォンの利用時間・機会はどの年代でもどんどん拡大しており、そのなかでも、SNSの利用は主要な用途になっています。
SNSは、いわゆるトリプルメディアと呼ばれる3つのメディア分類における「アーンドメディア」(ユーザーの信頼や評判を獲得し広めるメディア)の代表です。ある調査によると、日本のSNS利用者は8,270万人を超えており、SNS普及率は82%にも及びます。(出典:ICT総研「2022年度SNS利用動向に関する調査」)
10代20代の利用率が高く30代40代でも4-5割が利用しているTwitterやInstagram、10代を中心に利用年齢層を広げつつあるTikTok、50代60代においても利用率が7割を超えているLINEなど、各メディア共に高い利用率を保持しています。
日常の空き時間にTwitterのタイムラインやInstagramの発見タブで気になる投稿を探したり、商品やサービスを購入する際にSNS上の口コミを検索してみたりすることは、現在は多くの人々にとって当たり前の行動になっています。
SNSはメディアによって特性や強み、そしてコンテンツ表示のアルゴリズム(仕組み)が異なるものの、共通しているのは、「ユーザーの興味や関心事」を第一に設計・運用されている、つまりパーソナライズ(ユーザーの興味関心に関連するコンテンツが表示されやすい)されているという点です。共通の関心をもつユーザー群からフォロー&エンゲージメント(反応)を得るアカウントやコンテンツは、同様の関心を持つとアルゴリズムによって判断された新しいユーザー群に対してどんどん表示されやすくなります。その結果として、良質なSNSアカウントは既存だけでなく新規のユーザーを取り込みながら、ひとつのコミュニティを形成します。
コミュニティからの反応を多く得るほど、アカウントやコンテンツとしての評価が良くなり、拡大していくというメカニズムを正しく読み解くことが大切です。それを活用できれば、SNSはコミュニティ攻略およびコミュニティ活用の大きなエンジンとなりえます。
日宣は、いくつかのクライアント企業のマーケティングにおいて、SNSを中軸的なメディアとして位置づけ、活用し、ユーザーコミュニティを圧倒的に活性化させることによって、結果として業績のV字回復や拡大に大きく寄与させた成功実績を持ちます。
「なんとなくSNSを運用している」「とりあえずSNSを運用している」という状態を脱却し、真にそのパワーを駆使できたとき、SNSはマスメディアに匹敵するほどのメディア効果を発揮するといっても過言ではないかもしれません。
②コミュニティサイト運営
コミュニティサイトの運営も、コミュニティマーケティングの代表的な手法です。
コミュニティサイトとは、ユーザーやファン専用のサイトを設置し、相互の情報交換などによってコミュニケーションを促進するWebサイトのことです。登録したユーザーだけが閲覧できるクローズドなサイトから、外から誰もが閲覧できるオープンなサイトまで、さまざまなタイプがあります。
各々のユーザーが投稿した内容を他のユーザーが参考にできるサイト、あるユーザーの質問に他のユーザーが回答できるサイト、ユーザー同士でコンテンツを発信したり取引をできたりするサイト、ユーザー同士のマッチングを提供するサイトなど、コミュニケーションの在り方や機能、目的もさまざまです。
近年は、ブランドの顧客やユーザー、ファンと直接つながりたいという企業ニーズが高まっており、オウンドメディアとしてコミュニティサイトを運営する企業も増えています。
ユーザーに対して特別感を与えたり、ブランドのファンとしての意識を醸成したり、コミュニティサイトならではの役割や利点はたくさんあります。あるユーザーがほかのユーザーの疑問に答えるといったサイトの場合、カスタマーサポートの役割をコミュニティサイトが担ってくれるという効果もあります。
一方で、その運営には大きなカロリーがかかることも留意しておくべきでしょう。
コミュニティサイトにユーザーを集客し、自力でコミュニティ拡大をしていくためには、相当量のブランド力やマーケティングカロリーがかかる可能性があります。立ち上げてはみたけれど目的や費用対効果が曖昧で、運用にアクセルを踏めず、なかなか一線を越えられない… そうしたサイトにならぬよう、しっかりとした目的設計と運用戦略が必要です。
また、コミュニティサイトの閲覧強化や活性化の役割を、SNSが担うというケースもあります。当社が担当するクライアントにおいても、なかなか閲覧・利用が伸びないユーザー登録サイトの課題を、LINEを併用することによって解決している事例があります。コミュニティサイトとSNSを効果的に組み合わせることで相乗効果を発揮する可能性は大いにありえます。
③ライブ配信(YouTube)
ライブ配信とは、ライブ動画をプラットフォーム上で配信し、ユーザーにリアルタイムで視聴してもらう手法のことで、その場で質問やコメントを受け付けて回答することもできます。
自分が愛用しているブランドの担当者や、関心のあるカテゴリの有識者などにその場で質問して疑問を解決できたり、同じニーズや興味、嗜好性をもつ他のユーザーの存在が見える化されたりすることでユーザー同士の一体感を得られるなど、「体験」としてのインパクトは非常に大きいです。うまく運営することで、強いブランドロイヤルティやコミュニティ意識の醸成が期待できます。
また、魅力的な配信コンテンツやプログラムを用意し、事前登録型にすることで、ユーザーの情報を獲得し、配信後もつながりを保持することが可能となります。
最近ではライブ配信のパワーを活用し、「ライブコマース」と呼ばれる、ライブ配信をしながら商品を販売するという手法も増えており、新たな体験創出の方法として注目を集めています。
当社の事例としても、例えば、ある趣味カテゴリのユーザーたちの疑問や悩みに、その世界の達人が答えてくれるというライブ配信イベントを、クライアント企業のブランドアンバサダー向けプログラムとして実施しています。その結果、非常に高い参加満足度を獲得し、アンバサダーのブランドに対するロイヤルティと共創意欲を向上することに貢献しました。
また、あるクライアント企業においては、インナー向けプログラムとして、ライブ配信を活用しています。スペシャルなイベントをライブ配信で実施することで、インナーロイヤルティを高め、かつ、ライブ配信への参加を通じてインナー同士が互いの存在を身近に感じられたことで、一体感を醸成できた事例となりました。
得たい目的や成果を明確にした上で、手法として上手に活用できれば、ライブ配信はさまざまなパワーを発揮できるプログラムとなりえます。
④オフラインイベントの開催
ユーザーをリアルに集めて開催するオフラインイベントは、ある意味、古くからあるコミュニティマーケティングの定番的手法とも言えます。
ただ最近は、SNSをはじめとするオンライン上でのコミュニティが一般化してきたこともあり、オフラインでのイベントが特別な意味を持つようになってきました。
総務省の「ソーシャルメディアの利用実態に関する調査研究」(平成22年)によると、SNSを通じて知り合った人とオフ会などを開催したり、オフラインで実際に会ったりした経験があるかについて調査したところ、45%の人が経験したことがあったと回答したそうです。オンラインで始まる人との接点やつながりがデファクトとなり、オフラインによってそれがより強く、特別なエンゲージメントになっていく… 現在はそんな形が広まりつつあります。
当社の事例でも、SNSによるコミュニティ拡大・活性化に積極的に取り組んでいるクライアント企業において、上手にオフラインイベントを組み合わせて活用することで効果を発揮しているケースがあります。SNSでつながりを持ち、やりとりをするようになったファンたちを、特別な限定のオフラインイベントに招待することを、ロイヤルティプログラムとして機能させています。ブランドのトップや商品開発者と直に出会えて、かつ、ファン同士で交流もできるそのイベントは、あえて参加人数を抑えたクローズドなイベントとして位置づけることで、招待されたファンのなかに特別なもてなし感を醸成しています。このように、ロイヤルティを段階的に高めていくプログラムの中の重要なステップを担っているケースも多くあり、オンラインコミュニケーションとの上手な組み合わせ方やステップ設計が、オフラインインベントのポイントとも言えます。
コミュニティマーケティングを成功させるために取り組むべきこと
コミュニティマーケティングを始めるために踏むべき重要なステップや決めておくべきポイントを紹介、解説していきます。以下のことを十分に理解した上で、実施についてよく検討することが大切です。
コミュニティマーケティングを始めるための実施ステップ
コミュニティマーケティングを始めるには、以下のようなステップを踏む必要があります。
- ①実施する目的をはっきりさせる
- ②コミュニティを構築するツールを定める
- ③ガイドラインを作る
- ④コミュニティを立ち上げる
①実施する目的をはっきりさせる
当たり前のようで、意外に曖昧になってしまうのが、コミュニティを形成する目的です。まず、なんのためにコミュニティ構築というカロリーのかかる手法に取り組むのか、しっかりと議論と検討を重ねましょう。
目的によって、つくるべきコミュニティの在り方、運営方針、活用すべきツールの選定の考え方は変わります。目的を漠然とさせず、しっかりと定量化できるもの、投資対効果をしっかりと追えるものにすることが必要です。
②コミュニティを構築するツールを定める
ツールは大きく、アーンドメディア型か、オウンドメディア型かに分かれます。
前者は、既存SNSを利用するケース、後者は、オリジナルで自社のコミュニティサイトを立ち上げるケースが該当します。
それぞれにはメリットとデメリットがあり、それらを理解した上で選定することが重要です。
SNSを利用する場合のメリットは、既に多くのユーザーが利用し、多くのコミュニティが存在するメディアを活用するため、そのパワーや浸透力を利用して、すぐに立ち上げることができることです。イニシャルコストもあまりかかりませんし、軌道に乗ればスピーディにグロースさせることも期待できます。各メディアのアルゴリズムに対応しながら、ユーザーの反応(エンゲージメント)をしっかり獲得していくことができれば、ユーザー間で話題を拡散させたり、メディア上でのインプレッション(露出)を増やし、コミュニティを拡大させたりできます。
一方で、課題/留意点としては、そもそもSNSメディア自体は自社のものではなくSNSプラットフォーマーのものである、という点です。そこに機能しているアルゴリズムも、SNSプラットフォーマーが決定しているものであり、常に変更される可能性があります。そうした変動に常に備え、敏感に察知し、スピーディかつ臨機応変に対応していくことが必要となります。また、ログの管理のしにくさ、デイリーなどの頻度の高い運用が求められる点、炎上リスクへの備えなど、専門的な対策・ノウハウ・体制などが必要となります。
オリジナルで自社コミュニティサイトを立ち上げる場合のメリットは、管理/コントロールのしやすさです。投稿内容の管理のしやすさ、ログの管理のしやすさ、ユーザー間のトラブルが起きたときの対策のとりやすさ、などが挙げられます。また、サイトのUIや機能も自由に設計ができます。
一方、課題/留意点としては、コストが大きいことです。立ち上げる際には、開発時間もイニシャルコストもかかります。また、認知形成~集客~コミュニティ構築を自力で行う必要があるため、大きなカロリーを要します。
③ガイドラインを作る
コミュニティ運営の目的、運用上の判断基準やルール、ポリシーなどを定めた上で、ユーザーに向けてコミュニティガイドラインを公開します。
いざ何かが起こったときに、ガイドラインを公開してあることが、判断の基準や対策にもなります。
④コミュニティを立ち上げる
上記のステップを踏んだうえで、コミュニティを立ち上げます。
立ち上げた後は、まずはコミュニティの母集団を形成することが必要です。SNSであれば、広告やキャンペーンを活用した認知~フォローの促進、自社コミュニティサイトであれば、あらゆるユーザー接点/営業接点をフルに活用した認知~登録の促進に取り組みましょう。
コミュニティマーケティングで意識・注意すべきこと
コミュニティマーケティングを推進する上で、意識すべき点や注意すべき点がいくつかあります。
ひとつは、コミュニティの形成~拡大~活用には、時間がかかるということです。特に、初期の段階は、運営コスト/カロリーが先行します。ある時点を超えると、コミュニティからの情報発信力や拡散力、影響力がどんどん高まり、費用対効果が一気に改善しますが、そこに至るには時間も労力もかかります。その点を織り込んだうえで、コミュニティマーケティングは中長期で取り組む必要があります。コミュニティマーケティングはうまく運用すれば高い効果を発揮できる施策ですが、一定期間、我慢を要する施策でもあります。効果を出すためには、取り組むべき明確な目的を持ち、できるだけ早期に我慢の期間を抜けきるための手法やノウハウを駆使することが必要です。
また、コミュニティマーケティングは、プル型施策です。一方的なプッシュ(売り込み)やインセンティブによってコミュニティを形成できたとしても、その後、その力を活用して継続的にマーケティングを運営していくこと、コミュニティを拡大していくことは現実的に難しいです。
コミュニマーケティングにおいて重要なのは、あくまでコミュニティの自発的なモチベーションや行動であることを理解した上で、質の良い母集団づくりをベースに取り組んで、コミュニティを成長させていきましょう。
まとめ
コミュニティマーケティングは、成功すれば非常に大きな効果を発揮できる取り組みである一方、目的に合ったコミュニティ形成を実現し、自社のマーケティング戦略に寄与させるには、クリアなビジョン、専門的なノウハウ、フレキシブルな体制、リスク対策の備えなど、いくつかの必要条件があります。
時間もカロリーもかかる施策であり、社内のコンセンサスも求められますが、従来のマーケティングコミュニケーションに行き詰まりや課題が生じている環境下において、ブレークスルーするための有効な手法の一つであることは間違いありません。
今回の記事を参考にしながら、ぜひ、コミュニティマーケティングへの取り組みを検討し、実践に役立ててみてください。